クリムト作品
クリムトと言えば、黄金と色彩。
これまでに鑑賞したクリムト作品と、クリムトらしい作品を感想とともにご紹介します。
接吻
クリムトの代表作と言えば「接吻」ですね。
モデルはクリムトと恋人のエミーリエと言われています。
恍惚の表情で幸せの絶頂のはずなのに、なぜか切ない気持ちにさせられる作品。
足元が崖で不安定なことが、この二人のこれからを表しているように思えます。
ベルヴェデーレ宮殿にはクリムトの作品が多くありますが「接吻」の前だけ人だかりができています。真っ黒な壁に作品が掛けてあり、ライトが当たっているので、金箔がより輝いてみえます。
180×180 cm ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館(ウィーン)
ユディトⅠ
2019年「クリムト展 ウィーンと日本1900」で一番の注目作品です。
「ユデット」は旧約聖書外伝に登場する怖い女性。敵陣に潜入して敵の首を切り落として持ち帰る怖いお話。手に持っているのが、切り落とした生首です。クリムトの描いたユディトは、生首を持って恍惚の表情をしています。これがなんとも魅力的なのです。
ベルヴェデーレ宮殿では、白い枠の中に入っていました。明るい部屋の白壁に白い枠、額縁が金で、ユディトが生首を持っている。対比がおもしろい展示です。
ユディトが持っているのが生首だと知らずにいたので、艶っぽい作品だと思っていましたが、物語を知ってから東京クリムト展で見たら、怖くて、魅力的でした。
84×42 cm ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館(ウィーン)
フリッツア・リードラー
クリムトのパトロンだったフリッツァ・リードラー婦人がモデル。
女性の顔や手が写実的に描かれているのに対して、椅子や背景などが平面的です。
女性の頭と壁の幾何学模様がつながっているように見えるので、髪飾りをつけているように見えてしまいます。
クリムトは描く女性の肖像画は8頭身以上あるように見え、この作品のモデルも座っていてもスタイルがいいであろうとわかります。
153×133 cm ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館(ウィーン)
花嫁
クリムト遺作のひとつである「花嫁」は製作途中。
花嫁と題名が付けられているけど、中央の青い服の人が花嫁なのだろうか?
右側部分がこれからなんだけど、そのカエル足は?
出来上がりが見たかった作品です。
173×198 cm ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館(ウィーン)
死と生
1911年、ローマ国際美術祭で金賞を受賞した晩年の代表作。
左側に「死」、右側に「生」が描かれており、その落差が大きい。
「死」そのものを表すドクロが、十字架がいっぱいのマントをまとっており、「生」は色鮮やかに若い男女が描かれています。
ドクロの青系のマントがオシャレに見えるので、怖さを感じません。
178×198 cm レオポルド美術館(オーストリア・ウィーン)
乙女(処女)
若い女性が複雑に絡み合ってるように見えるこの作品は、エロティックな雰囲気があります。普段ではしないようなポーズがそう感じさせるのでしょうか?
「死と生」の「生」の部分と似てる感じがします。
この作品、実際に見てみたい作品のひとつです。
190×200 cm プラハ国立美術館 (チェコスロバキア)
フリーデリケ・マリア・ベーアの肖像
モデルのフリーデリケ・マリア・ベーアは、ウィーンのナイトクラブのオーナーの娘が恋人からプレゼントされたもの。「指輪とクリムトの肖像画」のどちらかと言われ、クリムトの肖像画を選んだそうです。
モデルの後ろに描かれた人たちが、東洋人っぽく見えるんですけど、どうでしょう?
日本より中国よりな感じで、でも「ワッショイ」って言ってそうにも見えます(笑)
このモデルさん、エゴン・シーレにも肖像画を描いてもらってるんですよ。
クリムトとシーレに肖像画を描いてもらった人は、この人ひとりです。
168×130 cm メトロポリタン美術館(アメリカ・NY)
ダナエ
「ダナエ」はギリシャ神話に登場する王女。
「孫に殺される」と予言された王は、一人娘のダナエに子供を産ませないために青銅の塔の閉じ込めるが、美しいダナエを見初めたゼウスが、ある夜、黄金の雨に姿を変えてダナエと結ばれ息子が誕生する。予言どおりならダナエの息子に殺されてしまうが、孫を殺せない王は、娘と孫を箱舟に入れて海に流してしまいます。流れ着いた島の王に気に入られ、ダナエと息子はその島で暮らしました。
というお話で、いろいろな画家がダナエを題材に作品を描いていますが、クリムトの黄金の雨は他の作家と違い、精子が混じっており、足と足の間に降り注いでいます。
それにしても、ダナエのうっとり感がねっとりしてエロ増しです。
77×83 cm ヴュルトレ画廊(オーストリア・ウィーン)
女友だち
なんだろう、わからないけど・・・友達なのか?
そういう関係にも見えるし、1人の人物の表裏のようにも見える。
この作品は第二次世界大戦時、ナチスにより没収されインメンドルフ城に保管されていましたが、ナチスが撤退時に放火したために、他の没収作品とともに焼失しているので、実際に見ることはもうできません。
99×99 cm
水蛇Ⅱ
水の中での様子です。
色彩や模様がギャルっぽくて、だぼだぼのスモックを着てるおじさんが書いたと思えない作品。あばら骨がうっすらと見えるウエストが細すぎます。
個人所有の作品なので、見る機会が来るのか?来ないのか・・・見たいです。
80×145 cm 個人所有
アデーレ・ブロッホ=バウアーⅠ
クリムトの代表作「接吻」と同じように金箔がふんだんに使用され、「フリッツァ・リードラー」と同じように、顔や手は写実的なのに対し、洋服や背景が平面的になっています。
ドレスには三角の中に目のある模様はエジプト美術、背景には唐草や市松といった日本美術から影響を受けた模様が用いられています。
元の所有者の遺言、ナチスによる没収、所有者の死、相続などがあり、所有権裁判を経て、モデルであるアデーレの夫の姪であるマリア・アルトマンの所有となります。
その後、2006年、当時の史上最高額1億3500万ドル(約156億円)でエスティ・ローダー社長に売却されましたが、現在は13位。1位はダ・ビンチ「サルバトール・ムンディ」の約500億円です。
エスティ・ローダーの社長は、ナチスによって没収や強奪されたユダヤ人の活動をしており、その作品をメトロポリタン美術館近くのノイエ・ギャラリーで公開しています。この作品もノイエ・ギャラリーで見ることができます。
138×138 cm ノイエ・ギャラリー(アメリカ・NY)
アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅱ
「アデーレ・ブロッホ=バウアーⅡ」は、Ⅰと同じモデルですが、趣が違います。
Ⅰ、Ⅱどちらも、なんとなくボォーとしている表情から、モデルさんの素顔が見える気がします。
上部分の赤い背景には馬や人物、下部分の緑の背景には花模様が描かれており、いかにもクリムトらしい作品になっています。
190×200 cm 個人所有
メーダ・プリマヴェージ
クリムトのパトロン、実業家のオットー・プリマヴェージの9歳の娘がモデル。
9歳には思えないキリッとした顔立ち、意思の強い目、ポーズ何もかもか「カッコイイ」作品。クリムトの作品の女性は、ほんわかしていたり、恍惚の表情だったりが多いが、このキリッ!を見ると、実際にハキハキした物おじしない少女だったんだろうと思われます。
「わたしを見なさい」と言われているようで、広いメトロポリタン美術館の中ですぐに見つけることができました。
150×110 cm メトロポリタン美術館(アメリカ・NY)
愛知県 豊田市美術館が所有している「オイゲニア・プリマフェージの肖像」は、メーダの母親のオイゲニアがモデルです。
マルガレート・ストンボロ=ヴィトゲンシュタイン
クリムトのパトロン、オーストリアの名門ヴィトゲンシュタイン家の娘マルガレーテの肖像画。父親が結婚祝いにと贈ったものであるが、黒く縮れた髪や眉毛が気に入らず、倉庫に眠ったままになっていた作品。
言われてみれば、黒くて縮れた髪なんだけど、実際はどうだったのでしょうね。
クリムトの肖像画の女性は、小顔で8~10頭身くらいに描かれており、マルガレーテもあり得ないほどスタイル抜群に描かれているので、ついでに髪も眉毛も当時の良い感じにしてあげていれば・・・と思ったりします。
この作品、実物大に近い大きさです。
180×90 cm ノイエ・ピナコテーク(ドイツ・ミュンヘン)
音楽Ⅰ
クリムトのパトロンである実業家ニコラス ドゥンバに、自宅の音楽室に飾る用に依頼された作品です。
左側は女性が竪琴を弾いており、右側にはスフィンクスが描かれています。
スフィンクスは「芸術は自由」の象徴と思われるけど、左端女性の腰あたりのマスクの意味がわかりません。
実際に見ると、他の作品に比べて小さいです。
落ち着く色合いに真ん中のゴールドが鮮やかで、素敵な作品です。
37×45 cm ノイエ・ピナコテーク(ドイツ・ミュンヘン)
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