東京都美術館で開催されているムンク展。
100点に近い作品が展示されています。
ムンク展に行って実際に目にして、とても印象的だった作品の感想です。
やはり「叫び」は一番印象的
今回来日している「叫び」は、テンペラ画(1910年)オスロ市立ムンク美術館所蔵です。
複数存在する「叫び」の中で、唯一黒目がないもので、盗難被害あったことのある作品。
「Don’t Think. Feel」
是非、その目で見て感じてください。
「叫び」と同じモチーフ「絶望」
「叫び」の隣に展示されています。
見た瞬間にズドーンと心に響いて、立ちすくんでしまいました。この作品は、心が元気な時に見たい。沈んでいるときに見てしまうと共感し過ぎて、苦しくなりそうで怖いです。
死を意識し始めたころの作品
ムンクは、5歳のときに母を、14歳のときに姉を結核で亡くしています。そのため、子供のころから死を意識することが多く、またムンク自身が病弱であったため、死に怯えていたと言われています。
「死」を意識した作品は、とても静かで寂しい気持ちが伝わってきます。
「死と春」
「病める子」
初恋 人妻ミリー・タウロヴの作品
長身でハンサムなムンクはモテモテでしたが、初恋は人妻。
小学生の初恋は人妻はOKですが、22歳で初恋が人妻はヤバい。それはやられちゃいます。
やはりその年齢に合った恋愛をして、フったりフラれたりを経験しておいた方が、いろんな意味で溺れなくてすみます。
「接吻」は生涯描き続けた題材
窓辺に立ち、裸で抱き合いキスしてる姿は、不倫関係を世間に見せつけているように感じられます。この作品の前の「接吻」は、同じように窓辺に立っていますが、カーテンに隠れてキスしているので、不倫関係を隠したい、背徳感が感じられるのですが、この作品は大胆。
「接吻」は同じモチーフで、たくさんの作品が展示されています。
二人が一体化しすぎて、食われてるのか!と思う作品もあります。
月明りが印象的な「月明り。浜辺の接吻」
「月明り。浜辺の接吻」は、ミリー・タウロヴと別れたあとの作品です。
月明りがとてもおもしろい形で表現されています。同じような月明りの形が「神秘の浜辺」「生命のダンス」でも見られます。
この月明りの形が「i」に見えて仕方ありません。
「マドンナ」のモデル・ダグニー・ユール
「性的自由」を結婚の条件にしたダグニー・ユールは、ムンクの友人と結婚後も、いろんな男性と関係を持っていました。もちろん、ムンクもその中のひとりでした。
結婚の条件に不倫を認めろって、スゴイですねダグニー・ユール。
ムンクの代表作「叫び」とともに有名に「マドンナ」のモデルがこのダグニー・ユールです。
「マドンナ」は油彩画とリトグラフがありますが、ムンク展では複数のリトグラフバージョンを見ることができます。左下の胎児やフレームに精子があるもの、いろいろなパターンがあるので、じっくり見てください。
ムンクの人生に大きく影響した トゥラ・ラーセン
結婚を迫るトゥラ・ラーセンともみ合いになったときに暴発したピストルで、ムンクは左手中指に怪我をしてしまします。この事件で二人は破局しますが、トゥラ・ラーセンがムンクの同僚と結婚したことで彼女に執着したり、怪我の痛みが長く続いたことから恨んだりして、精神不安に陥り、アルコール依存症になります。
この苦しい時期に描かれた作品が「叫び」。
いろんな意味でトゥラ・ラーセンは、ムンクの作品に大きな影響を与えたと言えるでしょう。
「生命のダンス」
「生命のダンス」は、赤いドレスの女性がトゥラ・ラーセン、手を取り合っているのがムンクと言われています。
白・赤・黒のドレスを着た女性、左から過去・現在・未来を表しています。白が清楚・赤は情熱・黒は終焉って感じですかね。ムンクが出会った女性たちに感じた女性感を表したもののように感じます。
逃げ出したかったムンク「赤い蔦」
赤い蔦がからまってる家から逃げ出そうとしている、青ざめてる男の表情が印象的です。
ムンクが恋人トゥラ・ラーセンとの関係に悩んでる時期に描かれているので、情熱的なトゥラ・ラーセンが赤い家、そこから逃げ出そうとしているのがムンクなのでしょう。
赤い蔦のからまる家が、パッと見は燃えてるように感じ、火事になった家から逃げ出してる様子なのかと思ったくらいです。結婚を迫るトゥラ・ラーセンから逃げたかったムンクは、火事から逃げるくらいの気持ちだったのかもしれませんね。
「吸血鬼」なのか!
作品名「森の吸血鬼」ですが、吸血鬼ではなく、首にキスをしているところです。
「森の吸血鬼」の元となる作品にムンクがつけた題名は「愛と痛み」
その作品を見た友人が、覆いかぶさった女性が男性の首にかみつき、からまった髪が流血しているように見えたことから「吸血鬼」と呼んだと言われています。
「愛と痛み」は6作あり、その後、女性と男性を反転させて作品に「吸血鬼」と作品名と付け、そしてその後この「森の吸血鬼」を制作しました。
「吸血鬼」ではなく、愛しい場面なんですが、男女のそれってガッツリいっちゃうと吸血鬼っぽくなっちゃうことってあるでしょ?ねぇそれなの?って感じで見ちゃいました。
「星月夜」はゴッホだけじゃない
「星月夜」といえば、ゴッホですが、ムンクの作品にも同じ「星月夜」があります。
明るい絵もあります「庭のリンゴの樹」
精神病院の退院後に描かれた「庭のリンゴの樹」は、ムンクなの?と思うくらいそれまでの作品と印象が違います。
ムンク展 印象的な作品のまとめ
ムンクと言えば「叫び」ですが、それ以外にもガツンとくる作品があります。
心に響く作品は、年代やその時の心の安定度によって違ってきます。
今回、私がムンク展に行ったときに、心に残った作品です。